
「障害者グループホームで働いてみたいが、グループホームって実際、どんなところなのか?どんな職員がいて、どんな働き方をしているのか?」と就業に向けて不安を抱えている方もおられるのでは。
そこでこの記事では、初めに障害者グループホームの基本情報を解説します。
グループホームで入居者さんをメインで支援する「世話人」という職種の仕事内容、一日のスケジュールを説明。
世話人のほか、「生活支援員」「サービス管理責任者」「管理者」についてもお話しします。
加えて、世話人として働くための知識、グループホームで働くメリットとデメリットについても解説します。
この記事を読めば、障害者グループホームとはどんなところか、きっとイメージしやすくなります。
世話人をはじめ、職員それぞれが、グループホームでどのような役割を果たしているかも分かります。
記事の最後には、グループホームで働く前に知っておきたい豆知識を、Q&A形式にまとめました。
当記事を読んで、障害者グループホームで支援を行う専門職の一人に、あなたもぜひ仲間入りしてください!
―目次―
1.障害者グループホームとは?
1-1.障害者グループホームの役割
1-2.障害者グループホームを利用できる人
1-3.障害者グループホームの種類 【4つの類型】
2.障害者グループホームで働く「世話人」とは?
2-1.世話人の仕事内容
2-2.世話人の一日
3.世話人としてグループホームで働くにはどうすればいい?
3-1.世話人になるにはどんな資格が必要?
3-2.世話人に向いている人の特徴
4.障害者グループホームで働く職員 【世話人のほかには?】
4-1.生活支援員
4-2.サービス管理責任者
4-3.管理者
5.障害者グループホームで働く職員 【メリット・デメリット】
5-1.メリット
5-2.デメリット
6.障害者グループホームで働く職員 【Q&A】
7.まとめ
1.障害者グループホームとは?

障害者グループホームとは、障害のある方が地域住民と交流をもてる地域の中で、家庭的な雰囲気のもと、共同生活を送る住まいの場です。
グループホームでは世話人などの職員が従事して、利用者は生活や健康面での支援を受けながら自立を目指します。
1-1.障害者グループホームの役割
障害者グループホームの役割として、障害のある人が親元を離れて共同生活することで、利用者が自立した生活を送れるようにします。社会からの孤立を回避し、生活上の不安をなくして、身体と精神の安定を図ることを目的とします。
グループホームでは、職員や利用者仲間と会話をしたり活動したりすることで、他者とコミュニケーションをとる機会が多く得られます。こうした環境の中で暮らすことにより、人とつながる力が育まれ、社会生活を送る自信にもなります
グループホームでは、専門の職員が一人暮らしを円滑に進めていけるようサポートするので、利用者の一人で暮らしたいというニーズに対応できます。
1-2.障害者グループホームを利用できる人
障害者グループホーム(共同生活援助)は、障害者総合支援法という法律に基づくサービスです。そのためグループホームを利用できるのは、障害者総合支援法が定める「障害者」に該当する以下の人になります。
・身体障害者
・知的障害者
・精神障害者(発達障害者を含む)
・難病患者
障害者グループホームは、基本的には障害の程度(障害支援区分)にかかわらず利用できます。ただし、障害者グループホームの利用を希望する場合、原則として障害支援区分の認定が必要です。
【年齢】
グループホームを利用できる年齢は、原則18歳以上です。ただし、児童相談所の所長の判断により必要性が認められれば、15歳以上18歳未満での利用も可能です。
身体障害者の場合、65歳未満の人、または65歳に達する日の前日までに障害福祉サービスを利用したことがある人も利用対象者に含まれます。
【支援体制の違い】
グループホームにより支援体制に違いがあるため、対象となる障害や障害支援区分が独自に決められている場合があります。そのため、事前にグループホームに確認しましょう。
1-3.障害者グループホームの種類 【4つの類型】
障害者グループホームには4つの類型があります。その内の3つ(①②③)は複数の利用者が一緒に生活するタイプ。残りの1つ(④)は、一人暮らしに近いタイプです。
①日中サービス支援型…… 夜間や休日だけでなく、24時間体制で相談および日常生活上の援助、入浴・排せつ・食事などの介護を行います。日中サービス支援型は、障害者の重度化・高齢化に対応するために作られた類型です。
②介護サービス包括型…… 自立した日常生活をサポートするために、主に夜間や休日において、相談および日常生活上の援助、入浴・排せつ・食事などの介護を行います。入居者は日中、勤め先に出かけたり、就労支援の事業所を利用したりします。
③外部サービス利用型…… 主に夜間や休日において、相談や日常生活上の援助のみを行い、入浴などの介護については、外部の居宅介護事業者に委託するグループホームです。比較的軽度の方が多く入居しています。
④サテライト型住居…… 一人で暮らしたいというニーズに応えるグループホームです。サテライト型住居では、民間のアパートなどを使って一人で生活します。食事や余暇活動などは近隣にある本体住居の交流スペースを利用。本体住居との連携により入居者間の交流も可能です。 ※入居者の利用期限は原則3年
2.障害者グループホームで働く「世話人」とは?

「世話人」は、入居者の身の回りの世話をする職員です。最も利用者に身近な職員であり、メインで利用者を支援します。
世話人のほか、グループホームには「生活支援員」「サービス管理責任者」「管理者」がいて、それぞれが役割を持ってグループホームで従事しています。
2-1.世話人の仕事内容
世話人は、地域にある一軒家やアパートの中で、共同生活を送る障害を持つ方の暮らしをサポートします。
世話人の主な業務は、
・掃除、洗濯、食事など、家事のサポート
・入浴や排せつの準備と見守り
・金銭管理(小遣い帳の記入支援など)
・健康管理(健康状態のチェックなど)
・服薬管理(処方薬の服薬の確認など)
・生活相談(悩み相談など)
・余暇活動のサポート(旅行やレクリエーションなどの企画、補助、引率)
・買い物、通院の同行
などです。
2-2.世話人の一日
あるグループホームの世話人の一日を、入居者の生活と重ねながら見ていきましょう。
◎6:30~8:30◎
〔入居者の動き〕
起床、バイタルチェック、朝食、服薬、掃除。
≪世話人の仕事≫
起床の確認、持ち物・身支度の支援。
健康状態の確認(バイタルチェックなど)、服薬の管理。
朝食の準備・提供など。
◎9:00~15:00◎
〔入居者の動き〕
会社や福祉事業所、病院などに出かけます。
≪世話人の仕事≫
入居者の送り出し、日中活動場所との連携。
共有部分の清掃、食材・日用品の買い出し。
入居者がグループホームに残る場合、昼食の提供や通院の付添いなど、日中支援。
◎16:00~18:00◎
〔入居者の動き〕
帰宅、バイタルチェック、入浴、洗濯。
≪世話人の仕事≫
入居者の迎え入れ、健康状態の確認、入浴・洗濯・着替えなどの支援。
夕食の準備。
◎18:00~21:00◎
〔入居者の動き〕
夕食・服薬・歯磨き、団らん・余暇。
≪世話人の仕事≫
夕食の提供、食事などの支援。
入居者とのコミュニケーション、生活相談。
金銭管理、服薬管理。
◎21:00~22:00◎
〔入居者の動き〕
寝る前の準備、服薬、就寝。
≪世話人の仕事≫
火の元や戸締りなどの安全確認、消灯。
支援記録の記載、翌日の支度。
※深夜24:00と3:00…… 世話人の夜間巡回、各部屋で入居者が就寝していることを確認。
参考:グループホームで働く世話人の“支援の手引き”(埼玉県発達障害福祉協会)
3.世話人としてグループホームで働くにはどうすればいい?

世話人としてグループホームで働くためには、どのような資格や学歴があれば良いのでしょうか?どのような経験が求められるのでしょうか?
3-1.世話人になるにはどんな資格が必要?
世話人として障害者グループホームで働くために、特別な資格や学歴は必要ありません。福祉や介護の経験がほとんどない方でも始められます。
しかし、調理・洗濯・掃除など、家事全般をこなす能力や、障害者についての基本的な知識や理解、介助技術が求められる仕事です。
そのため、ホームヘルパーや介護福祉士の資格、老人ホームや障害者福祉施設での就労経験があると、就職のときに優遇されます。
3-2.世話人に向いている人の特徴
世話人は障害のある人と直接関わる仕事であるため、以下の特徴をもつ方が世話人に向いています。
・人と接することが好きな人
・障害に理解のある人
・コミュニケーション能力の高い人
・状況に応じて柔軟な対応がとれる人
・家事をしっかりこなせる人
・健康で体力に自信のある人
上記のほか、観察力が高く、相手の気持ちを汲み取る力のある方も世話人に向いているといえます。
4.障害者グループホームで働く職員 【世話人のほかには?】

障害者グループホームには世話人のほかに、「生活支援員」「サービス管理責任者」「管理者」という3つの職種があります。それぞれの仕事内容を見ていきましょう。
4-1.生活支援員
「生活支援員」は、障害のある方の入浴・排せつ・食事の介助など、介護をともなうサポートを行います。生活上の相談対応もします。
世話人との仕事の違いは、世話人が家事や金銭管理など、生活場面で入居者をサポートをするのに対して、生活支援員は入浴・排せつ・食事の介助といった、主に介護場面で入居者をサポートします。
4-2.サービス管理責任者
「サービス管理責任者(サビ管)」は、利用者一人ひとりの支援計画の策定とその管理業務を行います。グループホーム内外の関係者、関係機関などとの連携。各職員の教育指導・助言を行います。
サービス管理責任者は、利用者への支援だけでなく、地域とのつながりを築き、職員のスキル向上を担います。
4-3.管理者
「管理者(施設長・ホーム長)」は、グループホーム内の管理業務全般を担います。管理業務の責任者であると同時に、施設の代表的存在です。
具体的には、サービスの品質管理、人事・労務の管理、施設運営の管理、経営・収支の管理などと、幅広い業務に携わります。
5.障害者グループホームで働く職員 【メリット・デメリット】

世話人など、障害者グループホームで働く職員のメリット・デメリットとは何でしょう?
5-1.メリット
■自らの家庭で培った、食事・掃除・洗濯など、さまざまな家事の経験を生かせる仕事です。
■障害者グループホームの世話人・生活支援員の仕事は、無資格・未経験でも働けます。
■入居者に寄り添った支援ができます。
■入居者の小さな成長に大きな喜びを感じられます。
■経験を積み重ねていくことで、障害への理解・知識が深まり、介助する力もついてきます。やがては関連資格の取得にもつながります。
5-2.デメリット
■入居者とのコミュニケーションに難しさがあります。
■夜勤の負担が心身ともに大きいです。
■病院・買い物に同行する際、利用者によっては安全確保に苦労します。
■依存にならないよう、入居者と適度な距離感を保つのに難しさがあります。
■地域社会の中で、障害に理解のない方に対応する場面もあります。
入職当初は、障害者とのコミュニケーションに難しさを感じたり、仕事の要領が分からず苦労したりすることも。しかし、少しずつ経験を積み重ねていくことで、知識やスキルは確実に向上していきます。やがては、対人援助職としての喜びを実感できるようになる方も多いです。
6.障害者グループホームで働く職員 【Q&A】

Q1:障害者グループホームの建物にはどんなものがあるの?
グループホームの建物には、戸建てのものと、アパートやマンションタイプがあります。各入居者には個室住居(原則)が割り当てられ、共有スペースの居間や食堂、トイレ・風呂などの設備があります。
Q2:障害者グループホームの入居者数はどのくらい?
入居定員は原則10名以下ですが、4名程度の小規模なホームから、10名以上の大規模なものまであります。
※既存の建物を利用する場合は20名以下などの特例があります。
Q3:世話人のお給料はいくらくらい?
月給で約21.8万円(令和4年の全国平均)です。時給だと1000円から1250円です。
Q4:障害者グループホームにはどんな人が入居しているの?
入居者の男女比は6:4で、年齢層は30代から60代までが多くなっています。障害特性も、知的障害・精神障害・発達障害・身体障害・高次脳機能障害・難病などと幅広いです。
Q5:世話人になるのに特別な資格はいらないようだけど、あると優遇される資格は?
介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、強度行動障害支援者養成研修、ガイドヘルパー、産業カウンセラーなどです。これらの資格があると、就職や賃金面で優遇されます。就職後は、世話人・生活支援員などの業務に生かせます。
参考:障害者グループホーム世話人(職業情報提供サイト jobtag【厚労省】)
7.まとめ
この記事では、障害者グループホームで働く職員について、世話人を中心に解説しました。
・初めに、障害者グループホームの役割や利用条件、類型について解説。
・次に、グループホームで働く「世話人」の仕事内容や一日について説明。
・世話人になるために必要なもの、向いている人の特徴について。
・世話人以外のグループホームで働く職員についても解説。
・障害者グループホームのメリット・デメリット、Q&Aも。
グループホームで働く職員の中でも、特に入居者に寄り添いメインで支援している世話人がこの記事のポイントでした。
この記事から、グループホームで世話人がいきいきと動き回っている姿をイメージできたでしょうか?
私にもできそう、私もやってみたい!と思われたかも知れません。
その気持ちを胸に、障害者グループホームの扉を叩いてみてはいかがでしょう!