老人ホームの平均費用と費用を抑える方法は?|年金で払えるのかも解説

「年金だけで支払っていける老人ホームってあるの?」

「老人ホーム費用を軽減する方法が知りたい」

とお悩みの方は少なくありません。

老人ホームへの入居を考えたとき、多くの方がお悩みになるのが費用面についてでしょう。

そこでこの記事では、各種老人ホーム費用相場や経済的負担を軽減する方法などをご紹介します。各種老人ホームの特徴なども紹介しているので、老人ホーム選びの際に参考にしてみてください。

この記事でわかること

老人ホームの民間施設と公的施設の費用相場

老人ホームの費用は、種類と地域により異なります。一般的に、国や自治体が運営している公的施設は、民間企業が運営している民間施設より安く利用可能です。しかし、公的施設は人気があるため、すぐに入居できる施設を探すことが難しく、長い間にわたり入居待ちをしている方も少なくありません。

また、地方にある施設は都市部にある施設よりも安い傾向があります。東京都と地方を比べると2倍以上違うことも珍しくありません。地方の老人ホームでは、賃料や人件費などが抑えられるため、利用費用も比較的安く設定されていると考えられます。

老人ホームの月額費用相場を種類別に以下の表にまとめました。

運営種類月額費用相場(万円)
公的施設特別養護老人ホーム10 ~15
介護老人保健施設10 ~15
介護医療院10 ~15
ケアハウス10 ~15
民間施設介護付き有料老人ホーム15 ~30
住宅型有料老人ホーム10 ~20
サービス付き高齢者向け住宅10 ~20 
グループホーム10 ~15 

自分の経済状況に適した施設であっても、条件を満たさないために入居できない場合があります。入居条件は、同種の老人ホームでも施設ごとに異なるので確認が必要です。

入居一時金とは?

入居一時金とは、介護施設に入居する前に、施設利用料の一部を前払いする費用のことです。入居一時金は介護施設の運営方針によって大きく異なり、全くかからない施設もある一方、1000万円以上必要な施設も珍しくありません。

入居一時金には施設ごとに初期償却と償却期間、償却率が決められています。初期償却は入居時に使用される費用で、初期償却率は入居一時金の10~30%に定められている介護施設が多いです。

償却期間は、想定される入居期間を表し、施設によって異なりますが一般的に10~15年に設定されています。償却期間内は、入居一時金から初期償却を除いた金額が、毎年均等に使われます。

施設退去時に返還金が貰えることも

償却期間内に施設を退去した場合は、使われなかった入居一時金は返還されます。例えば、償却期間が10年間の入居一時金を支払った場合、7年で退去したら3年分の入居一時金は返金されるということです。

入居一時金のクーリングオフと保全措置とは?

クーリングオフとは、契約後にもある一定の期間内であれば無条件に契約を解除できる制度です。老人ホームの契約についてもクーリングオフは適用され、契約後90日以内に解約すれば、初期償却を含む入居一時金を返金してもらいます。

クーリングオフが適用されるため、入居後に体調が悪化したり、過ごしていけないと思ったりした場合は、大きい経済的負担なしに退去可能です。

また、入居中に老人ホームを運営している企業が倒産するなどして、老人ホームに居られなくなった場合は、入居一時金(最大500万円まで)が返金される保全措置という制度もあります。

年金収入だけで老人ホーム費用の支払い可能

月額利用料が安く設定されている老人ホームなら、年金だけで支払うことができる可能性はあります。年金だけで支払える老人ホームがあるかを調べる前に、まずは自分の年金受給額を把握しなければなりません。

年金の平均受給額

日本に住んでいるすべての人が加入している国民年金や、会社員や公務員が加入している厚生年金の受給額には個人差があります。

厚生労働省年金局が令和5年12月に発表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金と厚生年金の平均月額受給状況は以下の表の通りです。

年度厚生年金(円)国民年金(円)
令和元年度146,16255,946
令和2年度146,14556,252
令和3年度145,66556,368
令和4年度144,98256,316

出典:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

年度により多少の増減はありますが、会社員や公務員で厚生年金と国民年金をともに受給している方は約20万円、自営業や専業主婦で国民年金だけの方は5.6万円の受給していることがわかります。

年金収入だけで老人ホーム費用を支払いたい方は公的施設

公的施設は、国や自治体から補助金を受けることができることもあり、民間施設に比べると月額利用料が抑えられています。そのため、年金収入だけで老人ホームの費用を支払える可能性がある施設です。入居希望順に受け入れるのではなく、緊急性が高い方を優先的に受け入れています。

公的施設は人気があり入居待ちの方が多いですが、空き状況は地域により偏りがあるため、入居する地域にこだわりがない方は、複数の地域の施設に登録しておきましょう。

以下でそれぞれの公的施設の特徴を紹介します。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、基本的に要介護3以上の高齢者を対象とした施設です。要介護1~2の方でも在宅での介護が困難な場合は、特例として受け入れてもらえることがあります。

介護保険を利用でき、価格を抑えて手厚いサービスを受けられます。しかし、24時間看護師が常駐することが義務付けられているわけではないため、常時医療ケアが必要な方は受け入れてもらえない可能性があります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、退院してもすぐに自宅で生活できない状態の高齢者が、数ヶ月間リハビリをしながら滞在して、在宅復帰を目指すリハビリ施設です。在宅復帰を前提に入居するため、他の老人ホームに比べると入所期間が短いです。

また、自宅で介護をしている方の負担軽減のために、短期間だけ要介護者を入居させるショートステイとしても利用されています。

介護医療院

介護医療院は、医師や看護師が常駐しており、要介護者の中でも特に医療ケアが必要な方の入居に適した施設です。

長期間入居することを前提としいる施設で、終末期医療を受けられ、看取りを行うこともできるため、多くの方が終の棲家として利用しています。

ケアハウス

ケアハウスは、自宅で生活することが難しい60歳以上の方が、低料金で介護サービスを受けられる施設です。

生活支援サービスが受けられる一般型と生活支援サービスにくわえ介護サービスも受けられる介護型があります。

さまざまなイベントや季節の行事などが開催され、入居者同士の交流があるため、孤独感を感じにくく楽しく生活できるという特徴があります。

希望のサービス・入居のしやすさを優先させたい方は民間施設

民間施設は、さまざまなニーズに対応するために施設の種類が豊富です。入居希望者は、その中から希望するサービスが受けられる施設を選べます。

入居費用は、公的施設に比べると高めに設定されている傾向があります。そのため、入居費用が低めに抑えられている施設でも、年金収入だけで支払っていくことは難し場合が少なくありません。しかし、入居のしやすさや希望のサービスを受けることを優先させたい方には、民間施設がおすすめです。

介護付き有料老人ホーム

食事の提供や生活相談、見守りなどの生活支援にくわえて、介護サービスを受けられる施設です。24時間介護スタッフが常駐しているため、要介護5の方でも入居できます。

介護度別に定額利用料を支払うことで、介護サービスが受けられるため、費用に大きな変動がなく支払いの見通しが立ちやすいことが特徴です。

また、夜間も看護師が居る施設もあるため、常時医療ケアが必要な方も安心して入居できます。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、自立している方や軽度の介護を必要としている方が、生活支援を受けながら過ごす施設です。介護サービスを受けたい方は、追加料金を支払えば希望するサービスを受けられます。

楽しく生活を送れるように、レクリエーションやイベントが充実している施設が多いです。

現在は自立した生活を送れるが、将来介護が必要になったときに違う施設に移動したくない方や、どちらか一方だけ介護が必要な夫婦で一緒に入居したい方などにおすすめです。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の比較的介護度の低い方が入居するバリアフリー賃貸住宅です。施設によって入居条件が異なり、介護が必要ない方、認知症でない方、医療ケアが必要ない方、連帯保証人を立てられる方などの条件が設けられているところもあります。

専用スタッフによる安否確認や生活相談を受けながら、これまでと同じような自由度が高い生活を送ることが可能です。

一般型と介護型があり、一般型は自立している方、介護型は介護が必要な方を対象にしています。一般型で入居している方が介護を受けたくなった場合は、外部の介護サービスの利用が可能です。

グループホーム

グループホームは、認知症の方を対象に受け入れている施設です。5~9人のユニットを組み、専門スタッフのサポートを受けながら、家事や掃除を可能な範囲で分担しながら共同生活することが大きな特徴です。できることは自分で行うことで、認知症の症状悪化の予防や進行を緩やかにすることを目的としています。

地域密着型サービスのひとつで、施設のある市町村に住民票があることが入居条件となっている施設が多いです。

老人ホームの費用を抑えるための5つのポイント

入居する老人ホームを選ぶとき、費用のことでお悩みになられている方は少なくありません。ここでは、入居の際に費用を抑えるための5つのポイントを紹介します。老人ホームの費用で悩まれている方は、是非参考にしてみてください。

各種補助制度の活用

補助制度を活用することで、月額利用料の負担を軽減することができます。利用できる制度として、高額介護サービス費支給制度や介護保険施設の特別減額措置、利用者負担軽減措置などがあります。これらの補助制度を利用するには、所得や貯金額が基準額以下でなければならないため、利用可能か自治体に問合せして確認しておきましょう。

都市部よりも地方の老人ホームを選択

老人ホームの月額利用料は、大都市にある施設ほど高い傾向があります。地方の方が大都市に比べると地価や人件費が安いからです。そのため、利用費用を抑えたい方は、地方にある施設を選ぶようにした方が、安くなります。

同様の理由で、駅近にある施設よりも、駅から遠くアクセスが不便で築年数が経っている施設ほど、月額利用料を安く設定している傾向があります。

多床室タイプを選択

老人ホームには、個室タイプと多床室タイプがあり、多床室タイプは月額利用料が安めに設定されています。そのため、多床室タイプを選択することも費用を抑える方法のひとつです。

しかし、他の人が生活している同じ空間に長期間住むことが難しい方も、少なくないでしょう。そのため、多床室タイプでも生活していけるかよく考えてから選択するようにしましょう。

生活保護の利用

年金を受給していたとしても、それだけでは生活が苦しいと認められれば、生活保護を受けることができます。また、生活保護を受けていたとしても、指定されている老人ホームに入居可能です。

生活保護を受けていて老人ホームへの入居を希望する方は、市町村の生活支援担当窓口やケアマネージャーなどに相談し、入居可能な施設を探してもらいましょう。

親族からのサポートを受ける

子どもや兄弟など頼れる親族が居る方は、サポートを受けれるか相談してみましょう。親族から経済的な支援を受けることが難しい場合でも、病院などに付き添ってくれるだけで、費用を抑えることが可能です。自立して生活できているうちから、将来老人ホームに入居するときに備えて、親族とはしっかりコミュニケーションをとり、サポートについて相談しておくことをおすすめします。

将来の老人ホーム入居に備え貯蓄をしておこう

年金収入だけでも老人ホームの月額利用料を支払うことは、可能であることを説明してきましたが、貯蓄がないと入居一時金がある施設に入居できないなど選択肢が限られてしまいます。そのため、将来に備えて計画的に貯蓄しておくことが重要です。

また、貯蓄以外の老人ホームの費用を捻出する方法として、所有不動産の売却益や生命保険会社などが提供している介護保険商品の利用などもあります。介護保険商品は、介護が必要な状態になったときに、給付金を受け取ることができるサービスです。

老人ホームは、終の棲家になる可能性もある住居なので、後悔のない選択ができるように計画的に貯蓄しておきましょう。

まとめ

  • 公的施設なら年金収入だけで入居費用を支払える可能性がある
  • 希望のサービスや入居のしやすさを優先したい方は民間施設がおすすめ
  • 補助制度の利用や施設の選択などで費用を抑えることができる
  • 将来に備えて計画的に貯蓄をしておくことが大切

各種老人ホームの費用相場や費用を抑えるための方法などについて紹介しました。年金収入だけでも支払える老人ホームもありますが、選択肢が限られてしまいます。経済的な負担を軽減するために補助制度を利用できるか調べておきましょう。

老人ホームを探すときになって後悔しないように、計画的に貯蓄をしておくことが大切です。